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哀蓮華 -あいれんげ-
心に風が吹いたのならそれはたぶん君のおかげだ
何もなかった僕の世界に石南花色の春は訪れた
君が片思いしていた3-Bの吉村を
僕はずっと殺したくって仕方がなかった
夕暮れの堤防で茜色に焼かれながら
来たるべき未来から逃れようとする僕
心の在り方は今もあまり変わらず
大切なものほど指の間から零れ落ちていくようで
みんなが同じ時期に手をあげて卒業していく
クラスメイトはとうとう誰もいなくなってた
朝顔の種だけが床に散らばったまま
花咲く理由を僕だけが見失っていた
哀しみは僕を助けてはくれなかったけど
安楽だけで行ける世界もどこにもなかったんだ
現実は非情の答えを僕の中に植え付け続けたが
現実以上の答えを僕は涙の中に探し続けている
君が大好きだった3-Bの吉村は
君以外の女を選んでこの町から卒業した
君もそれで別の誰かと手をつなぎあって
何食わぬ顔で未来へと歩み出していくんだろう
結局僕にはチャンスなんてひとつもなかった
僕が変われない以上、世の中が都合よく変わるわけもなく
ただただ孤独に成り切れない哀しみを一つ抱いて
花開くタイミングを今もこの教室の片隅で探し続けている
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