笑顔の代償

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笑顔の代償

  時代が棄てたプライド、乾いた風に舞って踊る  「誰かが拾って歌うまでそこに意味はないんだろ?」   君はそう言うとギターを放り投げて唾を吐いた   笑い飛ばすほどの価値もないな、って   ドブ川の中のベティ人形、誰も憐れだとは思わない現状   はがれおちた塗料のような純粋で皆が喜劇を選択するのさ   俺もそうやって目を背けてきたんだよ   悲しむほどの痛みは奔らないと逃げ口上ひとつでね   都合のいいロボットが欲しかったんだろ   もっとちゃんと俺を洗脳すればよかったのに   なまじっか心が吠えるもんだからさ   もう全部が耳触りで仕方がないんだよ   壁に描いた十字架と安っぽい博愛主義者たち   切り飛ばした愛情は何処へ向かっただろう   ほほ笑む事だけに幸せを見出す恐怖さ   聖書にはそんなことが書いてあったよ   ずっと何事もなかったかのようにね   どれかを棄てれば報われるというストーリーなら   いっそ笑顔を棄てて日陰の道を歩もうか   涙に濡れたあの日々を取り戻すことで   生きていることそのものを歓びだと思えるだろう   嘘で膨れたほっぺたで尚も喜劇を続けようとする   エンディングで泣きっ面を見せないように必死なんだ   時代が棄てたプライド、乾いた風に浚われて飛んだ   ドブ川の底に沈んだ哀れなベティ人形   はがれおちた塗料のような純粋   壁に描いた十字架と輪廻を繰り返す博愛主義者   切り飛ばした愛情は何処へ行くんだ   全部わかりきっていたことさ、と   君はそう歌いたいんだろう   引き攣った笑顔を代償に   総てを無くしたの歌だ
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