2.八月二十三日

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 どす黒くて真っ赤な温かい液体に包まれた頭の中で、オレ様は自分に何が起こったのかを確認する。  視界はぼやけているんだが、目の前にはさっきの女の子二人が涙を流しているのが分かった。  そうか、無事だったのなら、心から良かった。  怪我はなさそうだし、大丈夫なら泣く必要なんて無いんじゃないのか。  ついてねえ人生だって思ったけど、最後に可愛い女の子を助けられたんなら。  それはそれで終わりに箔が付いたと思えばいい。消えゆく意識の中、オレ様は柄にも無く心からそう思った。  どうか、これからも、彼女たちに幸あれ。 「本当に、それでよいのか」  頭の中に声が響いた。走馬灯とかいうやつかと思ったが、あれって確か今までの思い出が蘇る装置じゃなかったか。 「それが貴殿の願いならば聞き受けはするが、これで往生で構わぬか」  おうじょうって何だっけ、ああ無情みたいなものだっけか。まさしく今の状況が、そうなんだけど。 「死んでしまっても良いのかと聞いておる」  そんなわけが無いだろう。人生の半分も生きていないにも関わらず、こんなところでくたばりたくない。 「それが貴殿の願いで構わぬか」  いや出来れば、この街に居る筈のアイドルに会いたい。 「アイドルとやらは知らぬが、それは命を投げうっても叶えたいものなのか」  嘘です。死にたくないです。 「なら始めから、そう申せ」
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