6人が本棚に入れています
本棚に追加
どす黒くて真っ赤な温かい液体に包まれた頭の中で、オレ様は自分に何が起こったのかを確認する。
視界はぼやけているんだが、目の前にはさっきの女の子二人が涙を流しているのが分かった。
そうか、無事だったのなら、心から良かった。
怪我はなさそうだし、大丈夫なら泣く必要なんて無いんじゃないのか。
ついてねえ人生だって思ったけど、最後に可愛い女の子を助けられたんなら。
それはそれで終わりに箔が付いたと思えばいい。消えゆく意識の中、オレ様は柄にも無く心からそう思った。
どうか、これからも、彼女たちに幸あれ。
「本当に、それでよいのか」
頭の中に声が響いた。走馬灯とかいうやつかと思ったが、あれって確か今までの思い出が蘇る装置じゃなかったか。
「それが貴殿の願いならば聞き受けはするが、これで往生で構わぬか」
おうじょうって何だっけ、ああ無情みたいなものだっけか。まさしく今の状況が、そうなんだけど。
「死んでしまっても良いのかと聞いておる」
そんなわけが無いだろう。人生の半分も生きていないにも関わらず、こんなところでくたばりたくない。
「それが貴殿の願いで構わぬか」
いや出来れば、この街に居る筈のアイドルに会いたい。
「アイドルとやらは知らぬが、それは命を投げうっても叶えたいものなのか」
嘘です。死にたくないです。
「なら始めから、そう申せ」
最初のコメントを投稿しよう!