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3.目が覚めたら
目が覚めたら、知らない場所だった。
白い天井、白い部屋。なんか全体的に白かったから、ある意味あの世なんじゃないかと思った。
行ったことなんて無いけどさ。白いイメージがあるけど、それは天国か。
白衣を着たオッサンが出てきたから、そこでようやく病院だと気づかされた。だよな、オレ様が行くのは間違いなく地獄だ。
自分の名前と生年月日を言わされて、ついでに血液型まで教えた。O型だから違う血液型の臓器は入れられないと言ったが、医者は呆れた顔をしていた。
あれだけの事故で擦り傷で済んでいるのが、奇跡的としか言いようが無いのだとか。
念の為、色々と検査をされたが、驚くくらい異常が無いらしかった。手足は動くし、食欲もあるし、屁だって出る。腹に何も入っていないけど、きっと便だって。
もう少し入院していくかとか聞かれたが、ベッドの上は退屈なので退院を決めた。こちらでお召し上がりになるか、持ち帰るかみたいな気軽な感じだな。
手続きを済ませて建物を出るが、いくら探しても相棒の姿が無かった。
オレの愛車は何処に消えた。暫くキョロキョロしていると、黒い背広の男が声を掛けてきた。
「もしかして、バイクを探しているわけじゃないよな?」
男の台詞に驚いて、つい首を縦に動かしてしまった。
何か怪しい雰囲気があったから誤魔化すつもりでいたんだが、とっさに判断が出来なかった。殺人鬼だったら、どうしよう。
「ボロボロのバイクは署にある。ご同行願おう」
取り出したのが警察手帳だったから、オレ様はかなり肝を冷やした。
奴らのお世話になるようなことをした覚えがないので、これは何かの冤罪だと思った。こっちが殺人鬼だって。思われてたらどうしましょ。
「じ、自分は殺しなんて、してねっすよ?」
オレ様の言葉に男は噴出した。何やら小馬鹿にされたようだったから、少しカチンときそうになった。
「昨日の事故の調書を取らせて貰うだけだ」
よくよく考えてみれば、昨日のアレは交通事故だ。警察ってやつは、確かそういう案件も取り扱っていたっけか。安堵したら気が緩んだのか、腹の虫が鳴り始めた。
「……カツ丼は出ますかね?」
「……よくあるドラマじゃないんだぞ」
白黒の車に乗り込むと、署に向かう途中にコンビニに寄ってくれた。刑事さんが奢ってくれるっていうから、肉まんとピザまんとカレーまんまでご馳走になった。
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