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そして、署についてからが長かった。
色々と話を聞かれたり、状況を説明されたりで。本気で帰りたくて仕方がない。
何度か逃げ出そうとか思ったけど、それをすると信号無視で点をつけると言われたから我慢した。
解放された時には、とっくに日は傾いていた。相棒もお釈迦になってしまったし、バス停を探すのが心からしんどいって思った。
「あの」
声に振り向くと、二人の女の子の姿があった。
長い髪を二つに分けて下ろした子と、ショートボブの子が並んで後ろに立っていた。
多分、中学生くらいだと思うが。顔つきと体つきが幼いし、小学生かもしれない。
暫くぼんやり見ていると、おさげの子の方が深々と頭を下げてきた。
「助けて下さり、ありがとうございます」
何のことか理解できなかったけど、暫く考え思い出す。この二人って、もしかして昨日横断歩道を渡っていた子か。
「御身体の方は、もう平気なんですか?」
「あ、うん。問題無し」
女の子たちは二人揃って安堵の顔をしたから、なんだかこっちも顔が緩んだ。考えてみれば、この子たちからしたらオレ様は恩人みたいなものなのか。
「君たちは平気なの?」
「ええ、はい」とおさげの子の方が言った。
「……でも、調書とかで疲れました」とショートボブの子の方が言った。オレ様は心から同意した。
「怪我無くて良かったよ。それじゃ」
ここで色々と恩を売るような真似をしても無粋だし、ヒーローっぽく去った方が印象もいいかもしれない。後のことは今考える必要も無いし、今日はとにかく帰って寝よう。
「良くはないぞ」
突然の声に踵を返して、二人の女の子に目を向けた。
どちらも瞳を丸くして、何が起こっているのか理解していない様子だった。
様子を見るに、今の言葉は二人が発したものでないようだった。
「ちっとも良くないそ。青葉田国往」
その声は自分の上から聴こえた気がしたから、思わず空を仰いでみる。
一体のキジバトが羽ばたかせながら、こちらに降りてきた。まるで鳥が喋っているように聞こえたから、オレ様は耳を疑った。
それに何故、こっちの名前を知っている。
「何故なら、お主はこの地から出れなくなっているからの」
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