美形ともてはやされ、嫉妬に狂うあいつら

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美形ともてはやされ、嫉妬に狂うあいつら

昼休みの1時間休憩、人との関りをいっさい断ち切っていた悠太は、 いつものように教室の隅の席で、その机に突っ伏して仮眠をとっていた。 背後から聞こえてくる黄色い声たちが、僕の鼓膜を大きくゆすり、 その声をきっかけに、仮眠を取っていた僕はゆっくりと目を開けた。 振り返ると、クラスメイトの女子生徒5人が、僕の背後を陣取っていた。 なにかあったの? と感じたが、それでもそれ以上はなにも感じなかった僕は、 さきほど中断させられた仮眠を続行させようと、またその机に突っ伏した。 すると、ひそひそ話のようなささやき声で、背後の女子たちがなにかに盛り上 がり始めた。真後ろに陣取られていたので、聞き耳を立てずとも、その内容 すべてがもう筒抜けのように、僕の耳に入ってきた。 「立花君、、今こっち向いたよ!!やばい、めっちゃカッコイイ!!」 「ほんとそれ! しかも今わたし、ちょっと目合っちゃったんだけど!」 「もうだめだよ、そんなにしゃべっちゃ、、立花くんに聞こえちゃうよ。」 僕の後ろで盛り上がる彼女たちは、もう発情期の猫のような、 そんな興奮が抑えきれない状態で、互いに自分の興奮度合いをぶつけ合っていた。 「ねえねえ、やっぱり立花くんって、、彼女とかいるのかな。。?」 「はぁ!?あんなにイケメンなんだよ。?いるに決まってんじゃん。笑」 「でもいつも寝てるし、もしかしたら、、ワンチャンあるかもよ。。?」 僕のテンションとは反比例するほどに、背後の女子たちはどんどんと、 そのテンションを高ぶらせていった。 でもたしかに、僕は以前から出会う人出会う人に、 なぜかルックスをべた褒めされていた。 背が高くてシュッとしてるとか、 横から見たときの鼻が高くてきれいだとか、目が切れ長で艶やかだとか。 最近測った学校の身体測定でも、高1時点ですでに身長が182cmはあり、 中学生時代にも何度も何度も、後輩の女子に追い掛け回されたりもした。 最悪だったのは、、バイト終わりの帰宅道中に、なぜかいつも決まって、 モデルのスカウトマン2~3人が僕を待ち伏せていた。 口達者な彼らを取り払うのは、並大抵のことではなく、 様々な条件を付けては、契約書にサインを書かされそうになった。 そんな淡い経験も相まってか、背後でもてはやしてくる女子たちを、 僕は少しばかり、うざったく思った。 すると、そんなハーレム状態にまた、嫉妬覚えたのか、、? このクラスの"いわゆるイケてるグループ"の男子生徒4~5人は、 なぜか僕の方を見て、ぎらぎらと眉間にしわをよせはじめた。 でもこういったあいつらの一方的な嫉妬狂いは、入学した当初からもう すでに始まっており、なにかあるたびに、わざと肩をぶつかってきたり、 メンチを切ってきたり、舌打ちまでされたりと、 まさに嫌がらせのオンパレードだった。 だが、感受性ゼロで喜怒哀楽の全てが欠落してしまった今の僕にとって、 そんな一連の行為は、まったくといっていいほどに無駄でしかなかった。 悠太は、用を足したくなったので、その腰を軽くあげると、 いまだ険悪なムードが漂う教室から、気を遣うように静かに出て行った。 後ろからはまた、特有の黄色い歓声で溢れかえり、 僕は彼女たちに、いら立ちを覚えた。
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