「好きです」 そう告白された僕。

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「好きです」 そう告白された僕。

雨が降りしきっていた。 学校終わりの悠太は、傘を自らの頭上に差しながら、 数キロも離れた場所にある別の高校の校門前で、ある女性が出てくるのを 静かに待っていた。 僕はほんの数ヶ月前、他校に在籍するある女子生徒から突然の告白を受けた。 「あの、はじめましてですけど、、もう正直に言います、、 一目惚れですっ、好きです!! わたしと付き合ってください。」 突拍子もなく言われるまさかの一言に、さすがの僕もその目を瞬かせた。 それは学校終わりに偶然この校門前を通り過ぎた時の話で、 僕は普段なら、ママチャリという自転車を活用して、自らの高校まで通ってい たのだが、今日だけはその自転車の調子がどうも悪く、なので仕方なしに、 「歩行」という手段をとって、登下校することになった。 (どうせ帰宅するなら、いつもとは違う道から帰ることにしようかな、、) そう思い、いつも帰宅する道とは、まったく別のルートを歩いているとき、 ある高校の校門前で、誰かが僕のことをずっと見ていることに気が付いた。 最初は、気のせいか、、 そう感じて、すぐに歩みを再開し始めたのだが、やっぱり、、 どうもおかしい。 あきらかに何かを訴えかけてくるその女子生徒は、意を決したのか、 もう女の子らしい愛嬌あるペンギン走りで、僕のところまで駆け寄ってきた。 心が死んでいた僕は、何も感じず何一つ表情を変えることなく、その女子生徒 に向き合ったが、そのあとに放たれる言葉に、さすがの僕も絶句した。 「正直に言います、一目惚れです、、好きです!付き合ってください!」 そう言われた数秒間の間は、時が止まったかのような感覚に襲われたが、 すぐに我に返った僕は、わざとめんどくさい風に、嫌な顔をした。 この顔をすれば、相手もすぐに感付いてくれるだろうと期待していたからだ。 だがそんな浅知恵は、この気まずい状況に何の効力も働いてはくれなかった。 彼女は、顔色をりんご飴のように真っ赤に染めると、 その真珠のような澄んだ瞳でまるで試すように、僕の目をじっと見つめてきた たまらず振り切ろうとする僕だったが、最近の若い女子は恋愛に長けている。 けして逃がすまいと、何度も何度も可愛いげに言い寄ってきた。 あきれ返る僕をよそに、それでも彼女は、もう必死に言い寄ってきた。 この時点で、めんどくさいスイッチがフルに作動してしまった僕は、 「ん、、もうじゃあ、分かったよ。良いよ、、付き合っても。」 そう雑に返事をした。だかその言葉を聞いた瞬間、 あまりの嬉しさからで、、?  なのか彼女は周りの目を気にするように、 小さく泣きながら、その顔を手で覆った。 もうどうでも良くなっていた僕は、そんな彼女を置いてすぐさま 自分が目指す、自らの家へ足を運ばせていった。 そんな経緯があり、僕は自分の彼女を、静かにその校門前で待っていた。 さっきから雨がずっと降り続いていたので、頭上に差す傘の奏でる音たちが、 僕のストレスの一部になっていた。 (やっと、来たよ、もう遅い。。) ようやく姿を現した彼女は、大きく育ったたわわな胸を存分に揺らし、 短いミニスカから見える、ムチっと引き締まった太ももで、 まるで誘惑するみたいに、その校門を出ようとしていた。 名前は、愛原真理花。 聞くからにもうアイドル声優っぽい名前で、しかもその発せられる声自体も、 アイドルのように透き通って可愛いらしく、誰もがくすぐったくなり、身をよ じってしまうような、そんなキュートボイスだった。 真理花は、付き合ってまだ間もないにも関わらず、 自らのプライバシーを"なぜか"いっさい包み隠さず教えてくれた、 生年月日2004年11月25日生まれ、 年齢 今年で16歳、高校1年生。 部活はバレエ、習い事は習字やピアノ。 血液型A型、星座いて座、うし年。 身長153cm、スリーサイズ上から78・54・77。 通っている高校・お茶の水女子大学付属高等学校。 住んでいる地域、文京区音羽2丁目35番地。 住んでいる家族、父・母・姉・弟、彼女も含めての5人家族。 好きな趣味友達と一緒にタピオカ店巡り。 良く行くお店、もちろんタピオカ店。 好きな食べ物・イチゴ全部のせミックスフルーツパンケーキとマックのポテト 愛用の下着は、赤のランジェリーや紫のTバック。 もう何から何まで、包み隠さず教えてくれる彼女に、僕は気付けば、 "罠にはまってしまう"かのように、好感を抱いていくようになった。 雨が降りしきる中、校門前でようやくその姿をみせた真理花は、 すぐに僕を見つけると、あからさまな目配せで、僕に合図を送ってきた。 (だめだよ、、今はまだ、、こっちにこないで。) 真理花は、自分の友達に「僕」という彼氏の存在を未だに伝えていない らしく、その交際を隠しながら、日々の高校生活を送っていたそうだ。 なので、目の前の真理花の両隣りにくっつく彼女の友達を目にした僕は、 気を遣うように、彼女たちからある程度の距離をとった。 何度も申し訳そうな目でこっちを見て、彼女は友達と楽しそうに、 その歩みを進ませていった。 僕は真理花に連れられ、彼女の家に何度も訪れたことがあったので、 タクシーを使って、事前に待っておくことにした。  学校前でタクシーを手配した僕は、 「すいません、、文京区音羽2丁目35番地まで、お願いします、、」 申し訳なさげに運転手に伝えるとすぐに後ろの後部座席にその腰をおろした。 走っている最中、タクシーの中から窓の外に目をやるが 未だ、雨は降り続いていて、その勢いは秒を増すごとに強くなっていった。
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