人間オークション

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人間オークション

 ヤホカリは便利なサイトだ。一般人でも簡単に、使わないものや余ったものを売り買いすることができるのだから。  オークション形式にすれば、一番高い値段をつけてくれた人に売ることもできる。  即決価格設定をつけておけば、場合によってはその値段をつけてくれた人に速攻で売り渡すことも可能だ。ちょっとした小遣い稼ぎにもなる。ちょっとだけ郵送手配の手間はかかるが、それ以外は特に大きな問題もない。 「おっかたづけ~おっかたづけ~!」  私は鼻歌を歌いながら、自分の部屋を掃除していた。断捨離すると共に、いらないものをこの際パパーっと売ってしまおうという魂胆があったからである。もう読まない漫画は、セットで売ると高い値がつきやすい。香水や化粧品は、ちゃんと状態を記載すれば“半分くらい使用済み”であっても売れるものらしい。自分だったら少し高くても新品を買いたいけどなあ、と心の中で思いつつ、ポーチの中身も整理していく。  有難いことに、貰ったはいいが匂いがキツすぎてほとんど一度も使わなかった香水が出てきた。カネルのかなり高価なヤツである。高級ブランドなので、好きな匂いではないけれど捨てるに捨てられず、どうしたものかと思って箱にしまってそのままになっていたのだ。これはきっとそれなりの値段で売れるだろう。ピカピカの箱付きだから尚更である。  狭いワンルームだ。ここのところ忙しくて整理整頓の時間がとれなくなっていたが、どうにか会社の事業が落ち着いてきて残業も減ってきた頃合である。有給休暇の申請を出しても渋い顔がされなくなった。平日の今日、私が自宅でまったりお掃除に勤しめているのはつまりそういうことである。 「お」  一人暮らしを始めるにあたり、一部の荷物がダンボールに入れたまま放置されてしまっていた。さすがに二年もダンボールの中というのはまずいだろう。そして二年間ダンボールで放置できたということは、中身はさほど必要なものではないに違いない。私がそう思って、びりびりとガムテープを剥がしていくと。  中から現れたのは、数枚のボロボロのタオルに包まれた――人形だった。 「うっわ、ミカちゃん人形じゃん、懐かし。つか、私なんでこれ引越しの時家から持ってきたんだろ。もう遊ぶような年でもないっつーのに」
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