人間オークション

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 *** 「さあさあ皆さんお立会い!次の商品が来ましたよ!」  はっとして、私は目を開く。眩しい光が瞳を突き刺し、痛みを感じて呻くことになった。同時に、体を捩ろうとして全く身動きが取れないことも。 「な、何!?なんなの!?」  どうやら、十字架のようなものに磔にされているらしい。私の両腕はぴんと両脇に伸ばしたまま、全く動く気配がない。服は、昨夜眠った時のパジャマのままであるようだ。足も足で、柱にしっかりとくくりつけられてしまっている。動くのはせいぜい首くらいなもの。段々目が慣れてきた私は、視界に入った景色を見てぎょっとすることになるのである。  何十、何百、何千。そんな数のギャラリーが、暗がりからじっとこちらを見ているのだ。そして、やんややんやと騒いでいる。人間、ではなかった。彼らは全て、小さなお人形達であったのだ。中には私が持っているのとは別のミカちゃん人形らしき子もいる。みんながみんな、ステージの上で磔にされている私を見えざわめいているのだ。 「こちら、太田梅香(おおたうめか)。性別は女子、生産されてから二十六年が過ぎています。少々肌の状態が悪く、髪の毛などにもツヤがありません。着ているパジャマも安物ですし、ジャンク品扱いでの出品となります」 「ちょ、待って!待ってよ、何言ってるの!?」  私は思わず叫び、オークショニアらしき人物の方を見てぎょっとする。  私をオークションにかけているらしいその人物もまた、人形であったのだ。MEGOブロックの四角い人形が、壇上にちょこんと立ってマイクで話しているのである。その動きはちょこちょことして愛らしくもあった――私を、モノ扱いして競売品にしてさえいなければ。 ――何で私がオークションに賭けられてるのよ!しかもジャンク品って、ひどくない!? 「すみません、パジャマの状態をじっくり見たいので、画面にアップして欲しいですー!」 「わかりました。えっと、特に汚れが大きいところをお見せしておきますね。ご購入後に、こんなものだと思ってなかった!とクレームを入れられても困りますので」  唖然とする私をよそに、人形達は勝手なことを言いながら私の写真を撮る。別のMEGOブロック人形が、身の丈と比較してあまりにも大きなカメラを担ぎ、パシャリと写真を撮っていく。別のカメラでは同時進行で動画撮影、音声収録などもしているようだ。私の叫びもすべて聞こえているはずだというのに、彼らは全く意に介する様子がない。 「あの、説明文を見たのですけど」  はい、と可愛らしい声が上がった。その方向を見て、私はぎょっとする。  観衆に混じって手を挙げていたのは――私がまさに、売り飛ばそうとしていたミカちゃん人形のうちの、赤いワンピースの女の子であったがためだ。
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