人間オークション

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「太田梅香はジャンク品ではありますが、処女であると書いてあります。処女なのにジャンク品なんですか?汚れがあるんですか?」  何を、と思った次の瞬間。私の両足の拘束が解かれ、何者かに足をがっつり掴まれたのがわかった。無理やり首を傾けて、私は気づく。無数のMEGOブロック達が、私の足を掴んで強引に持ち上げようとしていることに。 「ああ、すみません。それもきちんとお見せするべきでしたね」  何をする気なの、と私は目を見開いた。パジャマのゴムに、ブロック達が手をかける。そして、何十体もの力で、強引に私のズボンをパンツごとズリ下げたのだ。私は一瞬にして、人形たちの前で下半身を丸出しにされてしまった。 「きゃあああ!な、何すんのよ、変態!変態ーっ!」  騒ぐ私。しかし、彼らは私の言葉を本気で聞く気がないらしい。もしかしたら、何を言っても聞こえていない可能性さえある――そう感じるほどの無反応だった。彼らは私のズボンとパンツをぽいっと足から抜き去って捨てると、そのまま両足を掴んで強引に開かせ始めたのである。  嘘でしょ、と思った。私は金切り声を上げて、体をぐいぐいとよじって抵抗しようとする。しかし、何百体ものMEGOブロックたちの力には全く太刀打ちができない。目の前にカメラマン役のMEGOブロック人形が降りてくる。そして――ぱっかりと大股に開かれた、私の大事なところを撮影し始めたのだ。 ――何これ、何これ!なんなの、ねえなんなの!? 「ご覧ください」  オークショニアは、欲情することも困惑することも一切なく、淡々と爽やかに進行を続ける。 「ご覧のように、下半身の手入れが全くされておりません。処女なので未通ですが、恐らくはこのように女性としての魅力がまるでなかったことに由来するものでしょう。外性器の状態も処女のはずだというのに、色素が沈殿してしまっており、非常にグロテスクな様態でございます。処女なのにジャンク品、扱いにした最大の理由はここでございますね」  それを見てわあ!と人形達から声が上がった――主に、嘲笑の意味での。 「うっわーグロ!本当にグローい!」 「皺だらけだし、尻の穴にまでがっつり毛が生えてるしなあ」 「処女膜残ってるのが信じられないよね」 「これ買って飾りたいって思うの、マニアな人形だけだろ。何か芸ができるわけでもないみたいだしさ」 「ジャンク品だけど、女で二十代だからちょっとだけマシな値がつくってわけかー」  性器を値踏みされ、嘲笑われている。そして、女としての自分を見下され、踏みにじられている。じわり、と私の視界は滲み始めた。こんなことってない。どうしてこんな理不尽で恥ずかしい目に遭わなければいけないのだろう。自分が一体、何をしたというのだろう。  そんな時、私の耳にその声はひときわはっきりと聞こえて来たのだ。さっき質問をした、私が持っていた赤いワンピースのミカちゃん人形の声だった。 「いっぱい遊んで、あとは適当にダンボールにでも詰めて放置しておけばいいってことだよねー?埃まみれになったらまた、ジャンク品として売り飛ばしちゃえばいいだけだもん。髪の毛ぐちゃぐちゃ、お肌ボロボロのままさー!」  その言葉で。  私は一気に、冷水を浴びせられた気分になった。  そして恐ろしい夢は――そこで幕を落としたように、あっけなく終わったのである。
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