3人が本棚に入れています
本棚に追加
AI×28歳
ついに買った。ついに買ったぞ!おっと、少し取り乱してしまったようだ。俺は斎藤昴28歳の会社員だ。何を買ったのかい、だって?そうそう、ついに買ってしまったのさ。人型AI「on.sitAI」を。なんせ俺は悲しくもこの年で出会いすらない独身だからな。さびしさを紛らわすためにと思ってな。でも、時代も変わってくもんだよなぁ。先刻ポチったばかりなのにあと2時間したら届くんだと。
ー2時間後
「ちわーす。斎藤様はこちらですか。」
「どもどもご苦労さんです。よっと、重いな流石に。」「おっと、斎藤様気をつけてくださいよ、傷ついても返品不可らしいんで。」「忠告ご苦労さまです。えっと印鑑印鑑っと…へい、ご苦労!」
「えぇ、ありゃーした。」
ふぅっ、さあ、来たぞ来たぞ二重なっているダンボールを剥がし、取り出す。微かに呼吸もしてるみたいだ。ほんとに生身の人間のようだな。顔はどんなもんかねえ。チラッと。顔をみた瞬間ギョッとした。あれ、可愛いは可愛いんだけど、どっかで見た事あるような…。まぁありふれた系統の美人だから無理もねぇか。突然にムクッとAIが起き上がる。「コホンッ、はじめまして私は人型AI、新川静です。家事等お申し付けいただければ何でも致します。どうぞよろしく。」「ああ、よろしく。」彼女、新川静は鈴の音のようなきれいな声をしていた。機械には到底出せない声であった。
人とAIの共同生活はこうして始まった。
彼女はよく笑った。自己紹介のときは硬い表情だったのだが、日が経つに連れ、少しずつ表情は和らいでいき、二人の空間を懐かしく感じた。今は昔からの仲良しのようになった。俺は彼女を信頼し、彼女も俺を信頼していた、とおもっていた。
-数日後
腹部、首元の圧迫感で目を覚ました。寝ぼけた目を擦る。なんと、静が私の上に跨り首を絞めているではないか。その表情は、憤怒と悲しみであった。力いっぱいの抵抗をするが解けない。「ぐっ、なぜ、こんなっ、ことを。ゴホッ。」「あれ?まだ気づかないんですか?まぁそれもそうでしょうね。貴方は6年前、5人もの女性を殺害したのですから。私一人のことなんてただの数字なのでしょう。さあ、答え合わせといきましょう。貴方がAIだと思って購入した商品名は何でした?ではヒントを。onの下はローマ字読みですね」「おっ、ねん、し、たいっ?」はっとした。"怨念死体"。そして全ての記憶が戻ってくる。そうだ、6年前私は彼女たちを殺した。あの顔の、雰囲気の懐かしさはかつて交際していた新川静そのものだ。「その顔はもう思い出しましたか。どれだけ涙を流して許しを乞おうが許しません。このまま、さよなら。」彼女の狂気に満ちた顔を最後に意識が沈んでいく。
はっ、夢か…どうも嫌な夢だったなあ。そろそろAIが届く時間だ。「ちわーす。斎藤様はこちらですか?」おっ、来た来た。荷物を受け取り、二重のダンボールを剥がす。突然にAIが起き上がり、こう言った。
「コホンッ、はじめまして私は人型AI、新川静です。家事等お申し付けいただければ何でも致します。どうぞよろしく。」
彼女の凍った微笑を目にした途端、俺の意識は暗転した。
最初のコメントを投稿しよう!