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「じゃあ敦也さんの事はどう思っていたの?」
「尊敬していましたよ。例え周囲の評判がどうであろうと」
それもまた意外な答えだ。てっきり千秋は婚約者である敦也を嫌っているか、何も思っていないと思っていたのに。
『尊敬』。彼方が聞く限り、周囲の敦也への評価とは真逆の言葉だ。
「敦也さんがどうしてうちに来ていたか、知っていますか?」
「……ぜいたくするため?」
「違いますよ。どうしても外せない占いを引き受けて、私に相談に来たんです」
確かにそんな話を厨房で聞いたことを彼方は思い出す。
離れを使うのは修行のため。千秋の側にいるのは占いのため。
それを考えると思っていたより真面目な人物のようだ。
「私が敦也さんが嫌いならわざと占いを外してやればいいんですよ。敦也さんが占いの仕事を続けたとしても、私の占いの方が稼ぎは遥かに上ですから結婚してからも生活に問題ないわけですし」
嫌なかんじに吐き捨てる十四歳少女だった。しかしこれが真実なのだから、彼方は反論などできないが。
「つまり千秋さんは敦也さんのプライドとかメンツを守るため占いをしてたんだね」
能力を失いかけた敦也にだってプライドはある。少ない依頼であっても彼にとっては重要なものだ。
その事がわかっていて千秋は相手のためにならない助け方をしているのだった。
「……それにしても彼方君は嫉妬深いのですね。まさか男性二人との関係を疑われるとは」
「嫉妬深い男は嫌い?」
「私も嫉妬深い方なので大丈夫です。婚約すれば、の話ですけど」
千秋はまんざらでもなさそうなのにどうもうまく行かない。余程彼女には余裕があるらしい。
「彼方君ならクラスの女子に好かれてもおかしくはないでしょうね」
「でもクラス、っていうか学年は五人しかいないし、女子は二人だけだし」
「皆さん彼方君と親しくなりたがっているでしょう?」
今までを後ろから見てきたかのような言葉に彼方は背筋が冷えた。
確かに彼方はクラス全員から好かれている。女子から寄せられる好意もわずかに気付いていた。
珍しい外から来た人間だから気に入られる。千秋がそういう推理をしたとわかっているが、それでもずばり言い当てられれば怖くなる。
「彼方君は普段お友達とは何をして遊んでいるんですか? 駄菓子を買って、ゲーム機持って外で遊んだり?」
「……言い当てないでよ。その通りなんだから」
この辺りは田舎だ。それ故に小学生の過ごし方も決まっていて、千秋でなくとも推測はできる。
「私は彼方君と過ごせる時間は嬉しいのですが、彼方君は友達とも過ごして下さいね」
「……千秋さんが嫌じゃなきゃ、千秋さんと過ごしてもいいでしょ」
「そんなの彼方君の魅力半減です。人は人と関わる事で魅力的になるのですから、今から色んな人と接して、いい男になって欲しいですね。婚約するとなると」
そう言われれば彼方も従わざるを得ない。
これからも秘密探しがてら、色んな人と関わろうと決意したのだった。
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