1熱視線

1/3
前へ
/182ページ
次へ

1熱視線

「ふわ?眠い」 彼は起きてスマホをチェックした。休日の今日。天気でも見ようと思っていた。 「ん?これは」 そこには事務所からのメールで、アイドル赤星の番組の出演依頼があった。これは彼の練習を観に来る話なので彼は承諾した。そんな彼はシャワーを浴びた。久しぶりに完全オフの日だった。 ラグビー界のオシャレ番長を張る彼はビシとブランド品の服を着て、高級車で出かけていた。この日は依頼していたオーダーメイドの服ができる日であった。 行きつけの洋品店でこれを受け取った彼は、癒しのひと時のためにお気に入りのカフェにやってきた。 「いらっしゃいませ」 「うっす」 「奥へどうぞ」 店のママさんは彼のためにカウンターの奥を進めた。彼はママさんの淹れたサイフォン式のコーヒーが好きなのをママさんは知っていた。 「本日は何になさいますか?」 「マンデリンで」 「はい」 他の客がいない店内。コポコポとコーヒーの音と香が漂うカフェには静寂が訪れていた。 ……静かだ。いいな。 普段熱い思いで戦う彼。しかし元来は優しい彼は、ここで本当の自分に戻り安かな気分に浸っていた。 目の前のコーヒー豆はお湯の中でふわふわと踊っていた。カフェのママさんの熟練の技に彼は魅了されていた。 そこに客がやってきた。 「いらっしゃいませ」 「どうも」 「あ。ミイさん」 「あーあ。疲れた……いつもの!」 「はい」 ……おいおい……なってこった。 カウンターに座ったのは、彼の部屋の掃除をしてくれているミイだった。 ……マジかよ。つうか、いつものって。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

899人が本棚に入れています
本棚に追加