1熱視線

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常連感たっぷりの彼女は足を組んでスマホを取り出し見ていた。 「くそ。アーモンドアイが来なかったか」 競馬情報を見ている様子のミイを彼は気にしないようにしていた。それに気にせずミイは他のニュースを見ているようだった。 「どうぞ」 「あ?どうも」 いつの間にかコーヒーができた彼は、香りを嗅ぐことにした。 ……うーん。男は黙ってマンデリン、か。 芳しいカップを手にした彼は、日々の喧騒も忘れ優しい顔で目を伏せていた。 その時、ミイのいつものができたようだった。 「はい。お待ちどうさま」 「あんがとさん」 ここでミイはラーメンを受け取った。このメニューに彼は目を疑った。 「……ママさん。あれは?」 「ああ。裏メニューなのよ」 ママさんはニコと微笑んだ。 「そもそもね。ここは昔私の父がやっていたラーメン店だったの」 「喫茶店じゃなかったんですね」 「そうなの。だから昔からの常連さんにはラーメンを出しているのよ」 秘伝のスープは少ししか作っていないのでメニューには載せていないとママさんは言った。 「あの人は当時からのお客さんなの」 「そうなんすか」 二人はミイの話をしているのにミイはスマホの画面に夢中だった。 「くそ!相場が荒れてやがる。これは売りだな……」 「ごめんなさいね?ミイさんは株式投資で」 「いいっす。多趣味なんですね」 ギャンブル好きのミイはアイスコーヒーのストローをギリギリかじり、必死にスマホを操作していた。これを彼は横目でじっと見ていた。 「自分もラーメンいいですか」 そんな彼はまだ夢中なミイも座るカウンターの隅でラーメンを食べた。 「ママさん。美味しいです」 「良かった」
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