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「ただいま……あ」
ハンガーの向きは彼女だった。彼はちょっとドキドキしながら、服をハンガーにかけた。そしてキッチンに向かった。彼の好きな鍋があった。嬉しかった。
これに少し気分が上がった彼は、服もそのままで彼女が映っているであろう部屋の画像を再生した。
「あ」
そこに映っていたのは、ソファに座ったすみれだった。膝の上に雑誌を置き、読んでいる様子だった。
「やばい?」
彼女はページをめくらず、あるページをじっと見ていた。
「違う?違うよ」
そんなすみれはすくと立ち上がった。そして畳み始めた洗濯物に向かった。そして大きなシャツを広げた。
「あ!それは」
赤星と食事に行った時、着ていた服だった。すみれは雑誌の服とこれを見比べていた。
「すみれちゃん……」
悲しい気持ちで胸が張り裂りそうな彼は、動きが止まったすみれを見ていた。
「ど、どうするんだ」
すると彼女は悲しそうに彼のシャツを抱きしめていた。
「ううう……違うよ?俺は、俺の心は君だけだよ……」
そんな彼女は涙を拭ったのかティッシュで鼻をかんだ。これに彼の心に火がついてしまった。
彼はすぐにスマホを取り出した。
「『今回の雑誌の内容にあるような交際はありません』っと。これで否定になるかな」
自分のTwitterにアップした彼であった。しかし。目の前のすみれの悲しそうな動きにいてもたってもいられない彼は、初めてすみれに電話をした。
「あ。もしもし。夏目さんですか」
『そうです。新垣さんですか?お世話になっています』
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