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「痛いっすよ」
「私まで痛いわ」
「フッフ。すみれさん……やっと会えましたね」
彼はそんなすみれの白い手を優しく掴んだ。
「ずっと会いたかったです。あなたのおかげでこうして」
「まだ試合は明日もありますよ?まだまだこれからです!新垣さん」
「あ。すみれちゃん。応援ありがと」
やってきた翔は二人の間に割り込んできた。
「今度の試合は俺の席で見てよ」
「申し訳ありませんが、私は新垣さんの席があるので」
「ふふふ。悪いな?翔」
「満面の笑みだし?全く」
勝利の後。会えた二人はまだ手を繋いでいた。短い時間であったが彼には濃い時間であった。
その後。
試合を勝ち進んだ日本代表は決勝トーナメントへ進んだ。快進撃の彼らはベスト8を決めてW杯を締めた。
この時、人気が出た彼らはラブビーの普及のためテレビ出演で多忙となった。笑わない男の彼は一番人気。家に帰る時間もなくメディアに出続けていた。
逢いたいすみれには、あの時に会ったきり。しかし、とうとう彼にも時間ができそうになっていた。
こんな彼に所属チームからトップニュースが来た。
「え?自分がオーストアリアに移籍?」
「ああ。夢だったろう?おめでとうな」
続く
次回最終話です。
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