過去と現在の君へ

現在（五）

「あの人を殺すのが今のあなたの目的なんでしょ？」
　紫織ちゃんは質問する。
「そうだ。僕はその為に生きている」
「その計画ってどんなものでしょうか」
「何故、君に言う必要がある」
「生まれ変わりの身としては知る必要があるかと思います。それともまだ私が生まれ変わりだと信じられませんか？」
「正直、まだ信じられない」
「でも、信じようと信じまいとこれに関しては事実ですよ？」
「分かったよ。生まれ変わりと言うのが事実として仮定しよう」
「やっと信じて貰えたね」
「仮定としての話だ。信じてはいない」
「充分です。では話を続けます。もしあなたのその目的が果たされたら菜穂さんは喜ぶと思いますか？」
「あぁ、喜ぶさ。ありがとうってな」
「そんなこと菜穂さんは喜ばないと思いますよ」
「面白いことを言うな。君みたいな子供に何が分かるんだよ」
「人を殺すとどうなるか知らない訳ないですよね？　一生、檻の中で過ごして社会的な地位を全て失うんですよ？　死刑。死刑ですよ」
「そんなことは知っているさ。それも覚悟の上だよ。安心してよ。奴を始末したら僕は自殺する。そして菜穂の元に行く。それが僕の幸せに繋がるんだ」
「怖くないの？」
「怖いさ。でもそんなことは一瞬だ。終わってしまえばそんなこと忘れられる」
「嘘つき」
「な、なんだと？」
「菜穂さんの記憶の中の真斗さんは人を殺す度胸はないはずですよ」
「馬鹿を言うな。僕は立派な大人さ。昔とは違うんだ。その気になればいくらでもやれる。簡単さ」
「人はそんな簡単に変わらないですよ。心の成長は止まったまま。あなたは子供のまま身体だけ成長した大人に過ぎません」
「子供の癖に生意気な」
「ねぇ、どうせ人を殺して自分も死ぬんでしょ？」
「だったらなんだよ」
「ついでに殺してほしい人がいるんですけど、いいですか？」