裏の竹藪

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裏の竹藪

 自宅裏の竹藪(たけやぶ)を、取り壊すことになった。  その土地は、竹藪を通り越した先に住む神主さんのお宅の土地で、元はどうやら城跡だった場所らしい。  この辺りの段々畑や竹藪は、子供達の格好の遊び場だった。  昔、この遊び場でかくれんぼをしたことがある。  俺はこの竹藪に入って、隠れる場所を探していた。  昼日中で陽の光も届いているというのに、何となく薄暗い。  その上湿っぽく、生暖かい風が肌を撫でた。  風が吹く度に、(ささ)の葉がザワザワと音を立て、竹は身をしならせる。その姿は、どこか不気味な印象を与えた。  奥へ奥へと迷うように進んでいくと、変なものを見つけた。  城の名と絵が描かれた(かわら)が落ちていたり、何かが(まつ)られた小さな(ほこら)があったのだ。  そしてそれを見つけた時、背筋をぞわりとするものが這った。  言い知れぬ不安と気持ち悪さに、俺は早々にその場を後にした。  後に、この竹藪で火の玉を見たという話を聞いた。  それもちょくちょく出現するらしい。  火の玉なんて科学的にも証明されているものだからと、俺はあまり気にもしていなかった。  しかしそれは、我が家の裏庭にも出たのである。  午前3時過ぎ。  洗面所の窓の外に、青白い光がすぅっと西から東へと走って行った。  その窓は、地面から160cm程度の高さに設置された窓なので、もし明かりを持った誰かが通ったのだとしたら、物凄い高身長の人が通ったか、もしくはライトを頭の上に付けて通らなくては、室内からそんな風には見えない。  しかも通った速度からして、随分な早足で、ライトを揺らすことなく走ったことになる。  さすがにそれを見た時は、いくら科学的に解明されているものだとしても、言葉にならない恐怖を感じた。  そんなモノが出る竹藪を、裏の神主さんは売りに出したらしい。  噂では、竹藪を取り壊して住宅街を作るそうだ。  何も起きなきゃいいけどと思っていると、工事が始まった頃、はやってきた。
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