大事に育てた

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はじめは誰のものでもなかった。 だが、時間をかけじっくりじっくりと俺が手塩にかけた。 「もうすこし、もうすこしだ……」 そうして、このコは俺のものになった。 ……はずだった。 向かいから、腕がするりと伸びてきて 俺が育てたあのコがクルリとひっくり返される。 『そろそろだな』 こいつもこのコを狙ってやがる。取られてたまるか。俺が丁寧に丁寧に、イチから育てたんだぞ。 俺は、奪い返すようにあのコをさらにクルリとひっくり返す。 「もう、食べ頃だな」 いざ!と思ったら…… 『サンキュー!いただきまーす』 あ、と思ったらあいつはあのコに軽くキスをし一口でパクリ。 『うめー!やっぱここの焼き肉最高だよな』 と……取られたー……俺が育てたこんがりうまそうに焼けたあのコは、喰われてしまった……。
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