恋巡る異能祭

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 そして当日。よーいどん、の合図で各自指定位置についた生徒たちが動き出す。  私は走る、ただまっすぐ廊下(ろうか)を走る。この恋心は、もはや誰にも止められない。  そう、今目の前に現れた親友のユキであっても。 「まさか、ケイちゃんも参加してるなんて驚いたな……」 「私もだよユキ。引っ込み思案(じあん)なあんたがでてくるなんて……。(ねら)いはミナトくん?」  雪は静かに(うなず)いた。拳をキツく握りしめて、軽くジャブをして見せる。そこには、来るなら本気で相手をするという威嚇(いかく)が見て取れる。 「お互い、これ以上言葉はいらないみたいね」  私が走り出すと、ユキは静かに腰を落として腕を引いた。 「ウルト・オーバー……。ケイちゃん、いくよ」  ユキの能力は、その大人しい性格とは裏腹にかなり暴力的。アフリカゾウを一発KOするほどの爆弾パンチだ。 「()ぜろ!」  ユキの一撃によって小さな爆発が起こる。爆発が起きたってことは当たったということ、ユキは今、笑っているのだろうか。  その笑顔を私は見ることができなかった。爆発による埃煙(ほこりけむり)が晴れた時、彼女はすでに絶望した表情を見せていたから。  私は彼女の最強の一撃を素手で受け止めていた。 「そんなに……なの? ケイちゃん?」  勝負そして恋を諦めたユキの頬には一つ涙が流れていった。 「ラブ・イズ・インフィニティ。乙女の恋心は最強。最初っからノーチャンスだったんだよ。あんたは……」  スッとユキの顔に手を近づけて、デコピンをする。彼女は静かに気を失って倒れた。
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