3人が本棚に入れています
本棚に追加
そして当日。よーいどん、の合図で各自指定位置についた生徒たちが動き出す。
私は走る、ただまっすぐ廊下を走る。この恋心は、もはや誰にも止められない。
そう、今目の前に現れた親友のユキであっても。
「まさか、ケイちゃんも参加してるなんて驚いたな……」
「私もだよユキ。引っ込み思案なあんたがでてくるなんて……。狙いはミナトくん?」
雪は静かに頷いた。拳をキツく握りしめて、軽くジャブをして見せる。そこには、来るなら本気で相手をするという威嚇が見て取れる。
「お互い、これ以上言葉はいらないみたいね」
私が走り出すと、ユキは静かに腰を落として腕を引いた。
「ウルト・オーバー……。ケイちゃん、いくよ」
ユキの能力は、その大人しい性格とは裏腹にかなり暴力的。アフリカゾウを一発KOするほどの爆弾パンチだ。
「爆ぜろ!」
ユキの一撃によって小さな爆発が起こる。爆発が起きたってことは当たったということ、ユキは今、笑っているのだろうか。
その笑顔を私は見ることができなかった。爆発による埃煙が晴れた時、彼女はすでに絶望した表情を見せていたから。
私は彼女の最強の一撃を素手で受け止めていた。
「そんなに……なの? ケイちゃん?」
勝負そして恋を諦めたユキの頬には一つ涙が流れていった。
「ラブ・イズ・インフィニティ。乙女の恋心は最強。最初っからノーチャンスだったんだよ。あんたは……」
スッとユキの顔に手を近づけて、デコピンをする。彼女は静かに気を失って倒れた。
最初のコメントを投稿しよう!