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さらに廊下を走っていると新たな生徒にエンカウント。彼女は廊下の真ん中で仁王立ちしていて、その周りには多くの生徒がすでに倒れていた。その様子を見るに、彼女はパワータイプではなさそう。
ピシッと規則正しく着こなした制服と堂々とした佇まい。間違いない、あれは生徒会長だ。
「廊下は走るなぁああ!」
その声を聞いた瞬間。足がピタリと止まってしまう。
生徒会長だけあってその能力はよく知られている。それでも彼女はこの激戦の中仁王立ちで未だ健在。
『相手の行動を制限する能力』。私は今、走ることを制限されたわけだから歩いて近づくことはできる。そういう能力だ。
「ケイさん……ですよね。知ってますよ。成績もよく親しみやすい生徒。そんな貴方もあんな能力を狙っているなんて、私は悲しいです」
「貴方だって参加してるじゃないですか!」
「おだまり!」
「ん!?」
声が出ない!?
「私は賞品は受け取らないつもりですので。この学校の治安を守るためだけの参加という感じですよ」
生徒会長はメガネをクイッと上げると、哀れむような目で私を見てきた。
「では、ケイさん。息を吐かないでください」
「んんっんー!」
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
そういう倒し方か。思った以上にこの人強い。苦しい……、意識が。
ボーッとする意識の中で、ミナトくんにの笑顔がふと、よぎった。
そうだ、まだだ。私はまだ。私の恋心はまだ……。
「終わらないんだよ!」
「……なっ!」
走り出し、一気に生徒会長に詰め寄る。
彼女は慌てたように言葉を放つが、仁王立ちのまま一切動かない。
「私に攻撃するな! 走るな! 近づくな! 止まりなさい! ……なんで」
能力の効かない私を前に諦めたようにメガネを外して、彼女は目を瞑った。必殺右ストレートは見事にブチ当たり、生徒会長はダウン。
「乙女の恋心を制限することなんて、誰にもできないんだよ」
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