3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゲボッ、ガッ。ゴホゴホ……」
急に体が軽くなってパッと視界が明るくなった。顔を上げると、首を横に向けたまま立っているオウカ先輩がいた。その左頬は真っ赤に染まってる。そして、私の右手に残る感覚。
私の理解が追いつくと同時にオウカ先輩も物凄いスピードで下がった。
「あー、やるじゃん。ここまで来た理由が今わかった」
ゆっくりとオウカ先輩のはクラウチングスタートの構えをとった。禍々しい雰囲気が彼女を覆う。
「あんた強いよ」
「うん、私は強いです」
私も先輩の構えに合わせてゆっくりと立ち上がりファイティングポーズを見せる。何かしてくるのは見ればわかる。怖いけど、今の私にはつけて立つ力がある。
――だよね。ミナトくん。
「必殺。『大暴走拳』夜露死苦ぅ!」
宣言と共に彼女はその場から消えた。次の瞬間。物凄い音を立てて私の真横の床が凹んだ。そして、また一つ、二つと轟音と共に凹みが増える。
フィールドの中で私は逃げられない。狙わずに高速で攻撃を与えているのであってもいつかは私に当たる。さらに、すごい威力だ。
ゆっくりと目を瞑った。怖いものなら見なければいい。そうして、君のことを考えるんだ。
『ケイならできる!』
うん、私ならやれる。
『「いまだぁぁぁあ」』
来ると直感した瞬間。目をかっ開いて思いっきり拳を突き出した。そして、まさかのドンピシャでオウカ先輩の拳にぶつかる。
「うおおあああ!」「らああああっ!」
ピキリッと音が聞こえた。硝子にヒビが入るような音が辺りから聴こえてくる。
そして崩壊。タイマンフィールドが崩れていった。
そうして、体育館の中央。私とオウカ先輩は二人拳を合わせて立っている。が、ふらりと後ろ向きに倒れて仰向けになる。オウカ先輩が。
「やるじゃん、異能はあんたのもんだよ」
そう言って、腕を突き上げグッドのサインを送るとダラリと腕を下ろしイビキをかいて眠りについたようだった。
……私勝ったんだ。
「おい、ケイ。まだ終わってねぇぞ」
「えっ……。ってアンタは」
最初のコメントを投稿しよう!