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「……俺?」
委員会が始まる前。
硬くてよそよそしかった1年生のテーブルを桜也が和ませた。
みんなのクラスを聞く。
スタートはそんなささいなことだった。
けど、それを生かして1年生の緊張を解いたのは紛れもなく桜也だった。
桜也はそれがすごいこととは思わないのだろうけど、私にとってはものすごい魔法だ。
桜也みたいになりたいとかまではさすがに思わないし、無理だとも思う。
……でも。
「私ももう少し、いろんな人と関わる機会を増やしたいなって。」
「……どうして?」
「……うーん。何だろう。
世界を広げたい……のかな。
言葉にすれば。」
人に関わらず、学校で授業だけ受ける毎日。
家でお料理することだけが唯一やること。
そして、ただただ蒼兄のことを想い続けるだけの日々。
中学の頃の毎日を高校でも続けていくことになるかもしれない。
……私が変わらなければ。
私はうんと頷く。
「狭い世界でしか過ごせない自分を少しでも変えてみたい。
桜也の彼女役は正直不安しかないんだけど……。」
「え、何で?」
「だって、私みたいな地味で大してかわいくもないし、何の取り柄もない人が、モテる桜也の彼女になるって、釣り合わないし、不自然だよ。」
「いや、そんなことないだろ。」
桜也が即答する。
優しいなぁと私はクスクス笑った。
「そんなことあるよ。私、自分のこと、ちゃんとわかってるよ。」
「いや、本当に!」
力をこめてそう言ってくれる桜也に私は笑いかけた。
「ありがと。気ぃ遣ってくれて。
でもね、周りは不思議がると思うんだよね。
何であんなモテる人が、あんな地味子を彼女にしてるのかって。
だからかえって桜也に迷惑がかかると思うから、気が進まないっていうのもあったのね。
……一番の理由は、嘘の彼女役なんて人を騙すようなことするのに、抵抗があるってことなんだけど……。」
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