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問2.一歩踏み出すためには?
「変わりたい?」
桜也が私の言葉を繰り返した。
私は大きく頷いた。
「……話、聞いてもらえる?」
私はくるっと駅とは反対方向に体の向きを変えて歩き出す。
目指すはあの桜の土手だ。
「おい、菜々!」
後ろから桜也が慌てて声をあげてついてくるのがわかる。
私は構わず、歩き続けた。
*
「……こんなところにベンチあるんだ……。」
昨日、桜也と女の子を見かける前、私は土手に沿って結構な距離を歩いていた。
その時に、ベンチが置かれている一角を見つけた。
昨日は散歩途中に休憩していたらしいおじいさんが一人腰かけていたけれど、今日は幸い誰もいない。
夕方になってきていたけれど、4月はもう日が長くなってきている。
少しくらい時間を使ったって、大丈夫だろう。
桜也と二人でベンチに並んで腰かけた。
「私、中学の頃、友達がいなかったの。
桜也は知ってるかわからないけど。」
別にいじめられていたとか無視されていたとかそんな事情はない。
必要な時に人と話す機会はあったし、みんなの対応も普通だった。
ただ、親しい友人と呼べる人は皆無で、私は基本、一人で過ごしていた。
遅刻にならないギリギリで登校。
授業は真面目に受け、休み時間は基本一人で次の授業の準備をしていた。
放課後になれば即帰宅。
部活は……中2の途中でやめてしまっていたから、そんな生活になった。
家ではお母さんと料理をすることが定番になって、いろいろなものを作れるようになったのは収穫だったけど。
中学校には別に楽しい思い出も友達もなかった。
「別にそれが嫌だったわけでもないの。
……でも、今にして思うと、もったいないことしてたのかもな……とは思う。」
「……もったいない?」
「うん。多分私がもう少し周りに自分から手を伸ばしていたら、もっと人と関わることができてたと思うし、楽しかったのかもしれないって思ったの。
今日の桜也見てたら、ますますそう思った。」
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