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「スマホ持ったの、そんな最近?」
「うん。だって必要なかったし。
親には何度もいらないのかって聞かれてたんだけど、家と学校の往復しかしてなかったから、必要性を感じなかったんだよね。
中学の卒業式直前に持たされたのも、お母さんが半ば強制的に契約してきちゃって……。」
自分で話しながら、改めてつまんない人間だなぁと思う。
つまらないにも程があるよねーと変に冷静に頭の中でツッコミを入れる。
「……やっぱり、私じゃない方がよくない?」
「もうキャンセルは受け付けないって言っただろ?
逃げんな。」
桜也が小さくため息をつく。
「……これから増えていくんだろ、登録。
それに、数が多ければいいってもんでもないだろ、そんなの。」
私は自分のスマホの画面に目を落とす。
家族以外で初めて登録された桜也の名前がある。
家族以外……でも桜也は準家族みたいなものかな。
次に登録する人は誰だろう……ってぼんやり思う。
「さてと……帰るか!」
桜也が勢いよく立ち上がり、私に右手を差し伸べた。
「……何?」
「……立てる?」
「バカにしないでよ。」
でもせっかくなので、桜也の手を掴んで立ち上がった。
私を引っ張ってくれた桜也の手は思ったより大きくて、がっしりしていて、力強かった。
「小さい頃はもっとかわいい手だったのに……。」
「お前もな。」
桜也はパッと手を離して、私の先を歩き出す。
でもすぐに振り返った。
「行こーぜー。菜々。」
私は微笑んで桜也の後を追った。
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