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桜也からの連絡は翌朝だった。
「今日の夕方5時半に、菜々んちに迎えに行っていい?」
私は桜也からのメッセージをじっと見つめる。
夕方からどこに行くんだろう……。
そんな時間から出かけたことないから、戸惑う。
とりあえず、私はスマホ片手に2階の自分の部屋を出て、1階のリビングに向かった。
「ねぇ、お母さーん。」
「あ、菜々、おはよう。」
お母さんはソファに座っていた。
「あ、おはよう。あのね、今日の夕方、桜也と出かけてきていい?」
「桜也くんと? どこに?」
当然聞かれるようねー。
私も桜也にどこに?と聞いたんだけど、会ってから説明するよ、徒歩圏内だから、としか教えてもらえてなかった。
「聞いたんだけど、内緒らしい。」
行き先が分からないならダメだとお母さんに言われれば、そう桜也に説明するつもりだった。
「桜也くんとなら、いいんじゃない?」
ところがお母さんはあっさりそんなことを言うもんだから驚く。
まぁ、赤ん坊の時から知ってる桜也だもんね。そんなものなのかな。
そして、桜也は、夕方5時半ぴったりにうちのインターホンを鳴らした。
「あ、おばさん、こんにちは。」
桜也がお母さんに屈託ない笑顔で挨拶しているのを聞きながら、私はスニーカーを履いた。
「あ、菜々、悪いな。こんな夕方から。」
「よくわかんないけど、別にいいよ。」
外に出て桜也の姿を見て、私は固まる。
いや、お互い固まった。
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