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問1.好きな人のことを知るためには?
私の初恋は5歳で、想い続けてかれこれ10年になる。
今でもはっきり覚えている。あの日、どうしてだか、幼稚園のお迎えに現れたのがお母さんじゃなくて、学ラン姿の蒼兄だったんだ。
「菜々ちゃん。今日は蒼兄と帰ろうね。」
当時中学3年生だったはずの蒼兄。
幼稚園児のお迎えをさせられるなんて、さぞかし嫌だったんじゃないかって、今の私は思うんだけど。
そんなことはちっとも態度に出さず、優しい笑みを浮かべて、しゃがんで私と目を合わせてくれた。
蒼兄とはそれまでも会ったことはあった。
私のお母さんが蒼兄のお母さんと高校の同級生で大親友で。
お母さんは、生まれたころから私を連れてしょっちゅう蒼兄の家に遊びに行ってたから。
おとなしい蒼兄より、蒼兄の1コ上のやんちゃな雅兄の方がよく遊んでくれていたから、私の中で蒼兄はそんなに目立つ存在じゃなかった。
でも、その日の蒼兄はいつもと違った。外で会ったのは珍しかったし、学ラン姿だった。
蒼兄もいくらかよそゆきだった……んだと思う。
いつもよりも大人っぽい蒼兄が、間近で目を合わせて微笑んだそのシチュエーションに私は心を奪われた。
……5歳ながら。
それ以来、私はずっと蒼兄を想ってる。
「好きな人」と聞いて思い浮かべるのは、必ず蒼兄だ。
……今でも。
恋に落ちたと思われるあの日の帰り道。
私は蒼兄と手をつないで帰った。
そして、蒼兄のもう一方の手につながっていたのが、蒼兄の弟の桜也だった。
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