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私は目的地もわからないし、徒歩圏内がどのくらいの距離かもわからなかったから、デニムパンツに無地の黒シャツというすごくシンプルな服装だったのだけど、桜也も組み合わせがまるで一緒だった。
これ、一緒に歩いたら、完全にペアルックみたいなんだけど。
「……桜也……。目的地って、ワンピースとかでも平気?」
「……え……あ、うん。」
「5分! 5分だけ待ってて!」
私は猛ダッシュで家に入り、階段を駆け上った。
クローゼットから、若草色のワンピースを取り出して、大急ぎで着替える。
長い髪を横に流すように結び直して肩から垂らす。
カバンはさっき持ってたオレンジの小さいリュックのまま。
本当は他のバッグにしたいところだったけど、時間を考えてそのまま背負って部屋を飛び出した。
玄関先ではお母さんと桜也がおしゃべりしていた。
「お、おまたせ!」
若干息があがった状態で、私はさっき履いていたスニーカーを履き直す。
「お、おう。ごめんな。」
桜也がきまり悪そうに応じた。
そして、お母さんの方を向く。
「じゃあ、おばさん、菜々のこと借りていきますね。」
「えぇ。行ってらっしゃい。気を付けて。」
お母さんはにこやかに桜也に答えた。
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