問2.一歩踏み出すためには?

8/12
前へ
/133ページ
次へ
             * 二人で歩き始めたものの、ちょっと気まずい。 黙って歩いた。 「……早着替え……。」 桜也はぽつんと呟いて、ぷぷっと笑った。 「何がおかしいの。」 「いや、すごい速さで変身してきたから。びっくりした。」 桜也は思い出し笑いでもしてる様子。 何よぉ……。 「あのままペアルックってわけにもいかないでしょ。」 「え、別に俺はかまわなかったけど。」 「からかわないでよー。もう。やめてよね。」 桜也め。 調子に乗ってるなぁ。 「でも、そのワンピース、似合ってるな、菜々に。」 不意に褒められてドキッとする。 桜也がそんなこと言うとは思わなかった。 驚いて桜也の方を向くと、目を逸らされた。 ちょっと顔が赤いように見えた。 「自分で言っといて、何恥ずかしがってるの。」 「いや、ちょっと口が滑った。」 口が滑ったって、失礼だなー。まったくもう。 「でもホントに。」 桜也の呟きが聞こえて、もう一度桜也の方を向くと、今度は目が合った。 桜也は優しく微笑んでいた。 ……蒼兄と似てる。 不意に蒼兄を思い出してしまって、ドキドキして目を逸らした。 いつのまにか駅から程近い商店街を歩いていた。 どこかお店にでも行くのかな。 「今日の目的地。」 桜也が立ち止まったお店は……美容室。しかも……。 「ここって、雅兄が勤めてるとこじゃない?」 「正解。」 「え? 何で?」 「ま、とりあえず入ろう。」 桜也が店のドアに手をかけて中に入る。 私はわけもわからず、慌ててついていった。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加