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「おー。菜々ちゃん。お久しぶりー。」
雅兄がひらひらと手を振った。
私はぺこりと頭を下げる。
雅兄は三兄弟の長男。
蒼兄の1コ上だから、26……今年27歳になるはずだ。
雅兄は、高校を出た後、専門学校に進み、美容師になっていた。
私が実際に仕事ぶりを見るのは初めてだ。
「えーと……?」
戸惑って桜也を見る。
そんな私を見て、雅兄が苦笑した。
「おい、桜也。
何も言わないで連れて来たのか? まさか。」
「ん。そのまさか。」
「マジか。お前なぁ……。」
さっぱり話が見えない。
「えっとですねぇ……。菜々ちゃんは今日は俺のお客さん……のようなんだけど?」
「へ?」
私がお客さん?
「……桜也? もしかしてこれは、変わりたい、を叶える一環?」
「正解。」
桜也が一言答える。
私の髪は伸ばしっぱなしのロングヘアだ。
しかもいつも一つしばり。
なんのおしゃれっ気もない状態。
めったに美容室にも行かず、行く時だって、ファミリーカットを謳う安いチェーン店。
あまりにも伸びてしまった髪を少し整えてもらう程度しかしたことがない。
「……変わる? 私。」
「髪型ひとつで女の子は激変するよ。」
雅兄がにこやかに言う。
「見た目もだけど、気分も変わるよね。」
……雅兄なら、いいかな……。
「どうしたらいいかも含めて、相談に乗ってもらってもいいですか?」
勇気を出して聞いた私に、雅兄はにこやかにOKをくれた。
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