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問3.昔の傷を思い出した時には?
週明けの月曜日。
余裕を持って登校した。
クラスに入って自分の席に向かう。
近くの席で二人組の女子がおしゃべりをしていて、私をチラッと見てから目を見開いた。
席に荷物を置き、ささっと片付ける。
そして、二人組の女子の方を向いて、私は勇気を出して声をかけた。
「おはよう。」
笑顔、こわばったかな。
自分から誰かに声をかけるなんて、今までほとんどしたことなかったから。
「おはよう。津川さんだよね?
髪、切ったんだ。
あんまり雰囲気が変わっちゃったから、一瞬誰かと思った。」
あ、私の名前、知ってくれてるんだ。
それだけで、どうしようもなく、内側からあったかい気持ちが溢れてくる。
「……ちょっと変えてみた……の。」
おずおず。
……これを変えたいのに、やっぱり出ちゃう。
桜也と話してる時みたいにすれば、全然平気なはずだと自分に言い聞かせる。
「すっごい、いいよ! かわいいよ!」
「うん、かわいい!」
二人が手放しに誉めてくれるから、どうしたらいいか内心焦る。
「でも、普通、入学前に変身、目指すでしょ。
私もずっと許してもらえなかったコンタクトにして、メガネの地味子から卒業してから、入学式迎えたよ?」
「そっか……。普通そういうもんなのね。」
「やだぁー、津川さん、ちょっとおもしろい!」
二人は笑いながら、私を話の輪の中に迎え入れてくれた。
二人は同じ中学出身だけど、在学当時はあまり接点がなかったらしい。
「だから、ここに入学して同じクラスになってから親しくなり始めたの。
まだ3日? 4日? だから、菜々ちゃんも遠慮はなしで?」
すごくコミュニケーション能力が高そうな舞ちゃんと……。
「ぐいぐい行き過ぎると、菜々ちゃん引いちゃうわよ。」
と苦笑しながら、冷静にツッコミを入れるゆりちゃん。
舞ちゃんの先導で、すでに名前で呼び合うルールにさせられてる。
「私、人付き合いが下手で……。
嫌な思いしちゃったら、ごめんね?」
不安でつい、そんなことを言ってしまう。
「平気、平気!
むしろ、私の方が無神経で嫌な思いさせるかもー。
その時も遠慮なく言って!」
舞ちゃん、テンション高いなー。
うらやましいくらいだ。
「舞ちゃんって、中学でも目立ってたんでしょ?」
ふと聞いてみる。
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