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あのあと、桜也に強引に駅前のファミレスに連れてこられた。
桜也が二人分のドリンクバーを頼んで、私の前に桜也が勝手に入れてきたカルピスソーダが置かれてる。
「何飲むとか聞かないで……。」
私はこんな事態になっているのがすごく不本意だ。
「え? お前、子どもん時からカルピスソーダ、好きだったじゃん。
それとも好み、変わった?」
桜也に聞かれて、私はふいっと顔を背ける。
「変わってないよ。いいよ。カルピスソーダで。」
グラスを手に取り、黄色のストローで甘酸っぱくてシュワシュワする液体を味わった。
「でさ、さっきのことなんだけど。」
桜也が言いかけたところで、私は遮る。
「却下に決まってるでしょ。何言いだしてるの。」
私の聞き間違いじゃなければ、桜也は私に彼女役をしろと言った。
冗談じゃない。
何が悲しくて、好きでも何でもない幼馴染の彼女役なんかしないといけないんだ。
しかも、本当に好きな人の弟だというのに。
「話くらい聞けよ。」
「聞くまでもないでしょ。
それに、私よりも適任な人だっているだろうし、それより何より本当の彼女作ればいいじゃない。」
桜也はモテる。
中学から背がぐんぐん伸びて、今や180センチに到達してるんじゃないか。
バスケ部でも中心的なメンバーとして活躍していた。
顔立ちも整ってる。
不本意だけど、蒼兄に似てなくもない。……いや、かなり似ている。
優し気な雰囲気だし、明るくて、いつも桜也の周りには、人が集まってて。
そんな人がモテないはずはない。
中学の頃、女子たちにキャーキャー騒がれていたのを知っている。
彼女がいたって話は、聞いたことはないけど、いたことがあっても不思議じゃない。
「さっきだって、あのシチュエーションと私に会った時の反応から察するに、告られてたとかじゃないの?」
そう重ねた私の言葉に、桜也がビクッとする。
……図星なんだろうな。
「はぁ……。」
桜也は大きくため息をついて俯いた。
そのまましばらく動かない。
私はとりあえず、言いたいことを言えたし、黙って桜也を見守った。
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