34人が本棚に入れています
本棚に追加
「……確かに告られてましたよ、さっき。」
ゆっくりと桜也が顔を起こし、私の目を捉える。
「でもさ、好きでもない子に告られたって、何の意味もない。」
桜也の目の力が強くて、目を逸らせない。
「俺は誰とも付き合う気はないから、告白なんかされても正直……迷惑。」
「いや、でもさ、もしかしたら、告白してくれた子の中には、好きになれるようないい子もいるかもしれないよ?」
桜也の不機嫌そうな顔にちょっと怯む気持ちを抱えながらも、そんなことも言ってみる。
桜也はますます眉根を寄せて、不機嫌そうだ。
「お前さぁ……。誰かに告られたら、いい人かもしれないから、とりあえず付き合ってみようとかするの?」
「……私が?」
桜也にじっと見つめられて、居心地が悪い。
「そんなことするわけないこと、桜也だって、わかってるくせに。」
最後は小声になってしまった。
「……やっぱりお前、いまだに蒼兄のこと、好きなんだ?」
桜也は、一番最初に私の蒼兄への思いに気がついた。
小学校に入学した頃だったろうか。
以来、私は他の誰にも自分の気持ちがバレないように、密かに蒼兄のことを想い続けてきた。
桜也は時々意味ありげな顔で私を見てきたりはしてたけど。
「……まぁ。」
「蒼兄がいるから、この高校を選んだの?」
「……そればっかりじゃないけど。」
「ふーん。……で、蒼兄には告るの?」
「はぁぁ??」
私は思わず大声を上げて、ハッとして身を縮こませる。
近くのテーブルの客が、チラッとこっちを見たような気がして、声を潜める。
最初のコメントを投稿しよう!