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そんなことを考えて、ぼんやりしていた私をどう思ったのか、桜也は腕組みをして、うーんと考える様子を見せた。
「菜々にもメリットあるよ。」
そして桜也は私をじっと見つめる。
「メリット?」
「うん。……蒼兄の情報。」
「は?」
「俺の彼女役引き受けてくれたら、お礼に蒼兄の情報教える。
それからさ、例え蒼兄と校内で親しくしたとしても、俺の彼女役引き受ければ、彼氏のお兄さんと話してる、くらいなもんで、誰も菜々が蒼兄のことを好きだなんて勘ぐることないじゃん。
それも菜々にとってメリットじゃない?」
桜也がニコニコと提案してきた。
「……蒼兄と兄弟だってこと、桜也は隠さないの?」
普通嫌がったりしないのかな……と思った。
そもそも桜也が蒼兄のいるこの学校に入ったのを知った時も、すごく意外だったんだけど。
「大っぴらに宣伝する気はないけどさ……。
でも、珍しいとは言わないけど、そんなにありふれてもいない手嶋って名字。
名前だって蒼也に桜也。
しかも兄弟の中でも特に俺と蒼兄って顔が似てるって言われることが多い……ってなれば、遅かれ早かれ知られるんじゃないの? そんなの。」
「確かに。」
桜也の言うことはもっともな気がしてきた。
桜也と蒼兄が兄弟ということが周知の事実になれば、確かに桜也と親しくしてた方が蒼兄との接点が増えても不思議はない……のかなぁ……?
なおも悩む私の様子を見ていた桜也がふっと笑った。
「じゃあさ、菜々。報酬の前払い。」
「え?」
「明日、うちのクラスでは午後のホームルームの時間に、委員会とか係とか決めることになってる。
菜々のクラスは?」
「うちもそうだけど。」
「進路委員になりなよ、菜々。
蒼兄の今年の担当委員会だよ。」
彼女役のことは答え保留で。前向きに考えといて、と桜也は最後に念を押した。
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