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episode263 臓器提供者①
驚くべきことはいつも眠っている間に起こるんだ。
起きている時に見ているものなんて
人生のほんのひと欠片にすぎないのかもしれない。
そして真実だけ語ると思っていた純粋な瞳も。
僕が目を閉じた途端——闇を湛えるのか。
病院の駐車場にリムジンが乗り付けると同時。
僕は転がるように後部座席から飛び出した。
昨日と全く同じように——。
周りに目もくれず真っしぐら出入口に突き進む。
背後で大きなクラクションを鳴らされ
「和樹!」
ようやく——。
よく見覚えのある黒いジャガーの窓から
身を乗り出すようにして椎名涼介が僕を呼び止めているのに気が付いた。
しかし歩みは止めなかった。
追って来るのは自由だ。
だけど僕には今
立ち止まっている余裕はない。
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