episode263 臓器提供者①

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「そうだな……こう言ってやったらどうだ?」 椎名さんは僕のベッドの足元に座ると 高飛車にふんぞり返って長い脚を組む。 「ごきげんようお兄様方。あなたたちはしばらく動けないだろうから、僕は椎名涼介とよろしくやってるよ。ちょうど彼、暇と身体を持て余していたみたいだから都合がいいの」 どうやら僕の真似をしているつもりらしいがひどいもんだ。 僕は怒るのも通り越して大きなため息を吐いた。 「そんなんじゃダメだよ。僕ならこう言うね」 「ほう。聞かせたまえよ」 「あなたたちが仲良く肝臓を分け合ってる間に、僕も悪魔とさもしい身体を分け合うことにしたよって――」 「悪魔ってのは僕の事かい?」 椎名さんは僕の頬を両手で包むと まんざらじゃない顔をして笑った。 「さあね。正直誰だってかまわない」 ——本音だった。 「ひどいな。お兄様方だけじゃなく僕も傷ついた」 「知らないよ。人の気も知らないで」 感じているのは疎外感? とにかく言いようのない苛立ち——。 「おい和樹!そんなことしちゃ……」 僕はこれ見よがしに自分で点滴の針を抜くと 肩を回して立ち上がった。 「もう平気。行くよ。2人が目を覚ます時、真っ先に僕の顔を見せてやるんだ」
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