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硝子戸の向こう。
2人が並んで寝かされている姿は滑稽だった。
よくできたマネキンが2体並べれているように見える。
医師が言うにはこの方が何かと都合がいいんだって。
何が都合がいいもんか――僕は心の中でごちる。
目覚めた途端刺し違えてもおかしくない仲なのに。
「手術は驚くほど上手く行きました。不思議なこともあるもんでパズルのピースを合わせるみたいに彼らの肝臓はよく似ていて。予定時間の半分もかからなかったんじゃないかな——こんなケースは稀です」
意気揚々と語る医師の説明に椎名さんと僕は揃って肩をすくめる。
「心配なのは術後の合併症、感染症それから拒絶反応ですね」
右側のベッドにいる征司に目を移し医師が言う。
「拒絶反応……」
正直それが一番ありえる話だ。
「先生、兄にドナーを知らせないわけにはいきませんか?」
ドナーを知ればなおのことだ。
「義理のお兄様だということをですか?」
「ええ。ですからできれば今すぐ彼らを別室にして移して頂きたいんです」
僕の提案に医師は不審げに顔をしかめる。
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