episode263 臓器提供者①

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九条さんは医師の指示でそのまま病室を移され。 直に目を覚ました。 「手術はとても上手くいきました。数日は気分がすぐれないかもしれませんが、何事もなければ2週間で退院できます」 ぼんやりと天井を見つめていた目が医師を捉え すぐに簡単な質問の受け答えができるまでになった。 僕は椎名さんに征司をお願いして。 病室の片隅に座っていた。 「それでは私は行きますが、何かあったら遠慮なくナースコールを押してくださいね」 彼の位置からは僕が見えない。 だからまだ、彼が僕の存在を把握しているとは思えなかった。 のだけれど――。 医師が病室を後にした途端。 「和樹、そこにいるね」 夢か現か——九条さんが僕の名を呼んだから。 僕は驚いて 「いるよ!」 思わず枕元まで駆け寄っていた。
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