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征司はと言えば——。
一体自分の身に何が起こったのか分かっていなかった。
だからベッド目を開いたままきょとんとして。
度々平気な顔で起き上がろうとするものだからこっちがひやひやした。
「僕は外にいる。何かあったら呼んでくれ」
椎名さんは僕の肩をポンと叩くと病室を出て行った。
何かあったらというのは——もしもこの命知らずが自分の置かれた状況も分からず僕を襲って来たらってことかもしれない。
「なにがあったか……説明しろ」
久しぶりに出す声は。
威厳こそあるもののひどく掠れていて。
征司はようやく。
己の身によからぬ事態が降りかかったことを悟ったようだった。
「長い夢を見ていましたか?」
その目は微笑む僕を見つめ。
次に自分の身体に繋がれた幾筋もの管や。
血管に刺さったままの針に目を落とす。
「俺は……」
「でももう大丈夫。現実の悪夢は終わりました」
僕は征司が何か言う前に告げた。
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