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征司はまだ朦朧としていて、ただ僕の言葉に怪訝そうに頷く。
「ああたしかに……夢を見てた……」
「そう。どんな夢を?」
こんな言い方はふさわしくないけれど――。
「あれだよ……」
「あれって?」
その無防備で悪意ない姿は
あどけない少年のように愛らしく見えた。
「おまえと船底に沈んでいった時の夢だ……」
「ああ……」
征司は少し怯えた目をして。
それが現実だったのか——。
はたまた本物の夢だったのか確かめるように瞬きする。
「怖かった?」
僕は征司の額に手をやりそっと前髪を払ってやる。
しかし当の征司は——子ども扱いするような僕のやり方が気に入らないらしく仏頂面でそっぽを向いてしまった。
かと思いきや——。
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