episode263 臓器提供者①

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「彼はここにいるの?」 僕は苛立たし気にナースに詰め寄る。 「ええ……あの……」 ナースは言葉を濁し 助けを求めるように再び後ろの先輩ナースを窺った。 「昨日のドクターと話してるんだろう?だったら僕も今すぐ会わせて!」 「おい、和樹」 「大事な話があるんだ!僕が先にドクターに会うはずだった!」 椎名さんが窘める手を払いのけ僕はより声を大にする。 我儘なお坊ちゃんが騒ぎ立てるので仕方なくと言った様子で。 「お静かに——話は私が伺っております」 中から助っ人に先輩ナースが現れた。 「だったらとっとと出て来いよ!——イヤ失礼、心の声だ忘れて」 心底混乱していたし。 昨夜九条敬が僕を眠らせた何かのせいでまだ軽い眩暈がしていた。 若いナースがこれ幸いとナースステーションへ逃げ帰ると。 僕の暴言など意にも介さない様子でベテランナースが口を開いた。 「それで?今すぐあなたをドクターに会わせろと仰るんですか?」
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