episode263 臓器提供者①

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不本意にも。 「——まったく世話の焼ける」 「いやいや。今日はマシな方です」 対立していたナースの手で空いてる病室に運ばれた僕は。 「よく冗談なんか言えるね、こんな時に!」 「僕が騒いだところでオペを中断できるわけじゃないからね」 「非道だ!」 固い簡易ベッドの上に寝かされたまま 椎名さんに八つ当たりするほかなかった。 「何が非道だい?」 椎名さんは日の差すカーテンを閉めながら 目を細めてこちらを振り向いた。 「九条さんさ……どうしてこんなこと……昨夜僕が征司に肝臓をやると言った時、一度は承知したと見せかけて騙した……」 それも僕を夢の中に置いたまま、自分が提供者に名乗り出て——。 こんな大事なことを勝手に決めるなんて。 「いいや。彼を恨むのはお門違いもいいとこだぜ」 その時だ。 目頭を袖口で覆ったままの僕の腕をどけて。 椎名さんが真顔で言った。 「彼がどうしてこんな手段に出たか——僕は知ってる。中川さんに話を聞いたからね」
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