40人が本棚に入れています
本棚に追加
「知ってるですって?あなたが?」
呆れてものも言えない。
何で当事者の僕が何も知らされていないのに。
完全な部外者であるあんたが知っていると言う?
頭に冷たいタオルをのせてもらいながらも。
僕は頭の中で悪態をつく。
僕の考えている事なんてこの人はお見通しだろうけど。
「生体肝移植の血液型不適合」
「え?」
聞き慣れぬ言葉に顔を上げた僕に
椎名さんはいつもより優しく微笑んだ。
「君は曲者のB型、征司くんは融通の利かないA型だろ?九条さんは?」
「……O型」
「そ。博愛主義者のO型。特に医療の世界ではO型は万能供血者と言われる」
聞いたことがある。
O型の人の血は誰にでも輸血できるんだって。
「九条さんは知ってたんだ。君がいくら臓器提供を申し出たって、血液型不適合で省かれるってことを——だけど自分なら彼を助けられるって」
最初のコメントを投稿しよう!