episode263 臓器提供者①

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中川の話じゃ九条敬の根回しは物凄く早かったらしい。 昨夜のうちに医師と話をつけた。 そして僕を眠らせておいて。 中川に自分が提供者になると申し出たんだ。 夜中に無理を押し通し必要最低限の検査を済ませ。 翌朝には天宮家の当主を助けるとの名目で。 選りすぐりの腕の立つ医師を呼び手術を任せた。 彼は急いだはずだ。 僕が目覚めるまでに——何としてもオペ室に入るため。 「他人の臓器なんて……絶対征司の身体に入れたくないと僕が言ったから……?」 「そんなこと言ったの?」 「……うん」 それでも彼が提供者になる必要なんてなかったんだ。 ただきっと——。 「九条さんから移植されたものなら……僕が今まで通り征司を愛することができるって……考えたのかも……」
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