episode263 臓器提供者①

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手術が無事に成功したと聞かされたのは それから何時間かたった後だった。 それについては——僕も椎名さんも何ら心配はしていなかった。 あの九条敬が準備していてかつ、天宮家の当主の命を救うとなれば。 最高の医師団が万全の手を尽くすことは目に見えていたからだ。 その頃には僕の身柄も特別室に移され。 まっさらなシーツを敷いた心地よいベッドの上で 最後の点滴が落ちるのを見ていた。 「2人は目を覚ましたって?」 「いや。まだみたいだ」 「そう」 部屋に戻ってきた椎名さんに尋ねると 僕はようやくベッドに半身起こした。 「もう起きていいの?」 「平気。よくあることだし点滴も終わった」 頭もはっきりしているしイヤな眩暈もない。 「ねえ……2人が目を覚ましたらさ」 「ん?」 「僕はなんて言えばいいのかな……?どんな顔で?何を言えば?」 ただ心臓を少しずつ食われるみたいな。 痛みを伴う不安の虫だけは治まることがなかった。
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