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手術が無事に成功したと聞かされたのは
それから何時間かたった後だった。
それについては——僕も椎名さんも何ら心配はしていなかった。
あの九条敬が準備していてかつ、天宮家の当主の命を救うとなれば。
最高の医師団が万全の手を尽くすことは目に見えていたからだ。
その頃には僕の身柄も特別室に移され。
まっさらなシーツを敷いた心地よいベッドの上で
最後の点滴が落ちるのを見ていた。
「2人は目を覚ましたって?」
「いや。まだみたいだ」
「そう」
部屋に戻ってきた椎名さんに尋ねると
僕はようやくベッドに半身起こした。
「もう起きていいの?」
「平気。よくあることだし点滴も終わった」
頭もはっきりしているしイヤな眩暈もない。
「ねえ……2人が目を覚ましたらさ」
「ん?」
「僕はなんて言えばいいのかな……?どんな顔で?何を言えば?」
ただ心臓を少しずつ食われるみたいな。
痛みを伴う不安の虫だけは治まることがなかった。
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