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その瞬間、征司の顔に言葉を越えた何か——。
直観のようなものが走るのを僕は見た。
悟られてはいけないと思えば思うほど。
「——俺の肝臓の提供者は知ってる男か?」
「……いいえ。まったく」
僕は瞳の揺らぎを止められない。
隠す方法はただ一つだった。
目を閉じて唇を重ねること——。
「僕が肝臓を上げようと思ったの……でもダメだった」
耳元に囁く甘えた声に
思案の向こうにいた征司がふと我に返って微笑む。
「おまえの肝臓なんかもらったら悪い感染症で死ぬか、拒絶反応で死ぬかだろうな」
「ひどい!」
征司は少しだけ生気の戻った顔で
からかうように僕のポンポンと叩いた。
「——まあ何はともあれ命拾いしたんだ」

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