となりの・・・

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となりの・・・

母のとなりは、いつも兄弟で取り合いになる。 俺のうちは、5人兄弟でみんな年子。 長男の俺。 すぐ下の長女の妹。 双子の次男次女。 末っ子の三男。 みんな母さんが大好きで、家の中でも外でも母さんの取り合いだ。 みんね母さんに構ってもらいたくてケンカしてしまうのだ。 ご飯の席順から車の座席まで母さんのとなりをみんな狙っている。 夏休み。 母さんの実家に行った。 田舎にある母さんの実家。 つまりじいちゃんとばあちゃんの家だ。 そこで、俺は まさかあんな恐怖体験をするなんて 知らなかったんだ。 じいちゃんとばあちゃんの家は良いところだった。 本当田舎だけど、近くに山や川があって遊べるし 家の裏には畑が広がっている。 何より、家が広いから家の中でも走り回れる。 俺達兄弟は山や川で遊びまくって、夜はみんなで庭先で花火をした。 そして、我が家の恒例行事 「ママのとーなーりーはーアタシのー!!」 「夜ごはんとなりだったでしょー!次はわたしー!!」 「僕もーー!!」 母さんのとなりの争奪戦(寝場所編) こういう時、1番年上の兄である俺はガマンだ。 兄弟の中で1番大人である俺が譲ってやるのがさだめ。 ・・・別に出遅れた訳じゃない。 「おーー、タカシ。じいちゃんのとなりなら空いてるぞ。こっちで寝たらええ。」 母さんのとなりが他の兄弟に取られてむくれているように見られるのも腹が立つので 「別にいいけど、じいちゃんが寂しいなら仕方ないなーー」 とまくらを持ってじいちゃんばあちゃんの寝室に行く。 じいちゃん、俺、ばあちゃんのいわゆる川の字というらしい寝方で横になった。 「なぁ、タカシ。あの天井の模様、人の顔のようだぞー。」 じいちゃんが天井を指差しながら俺をおどかしてくる。 うわ、マジで見える! 「やめてよ!じいちゃん!」 「ほらほら、電気消しますよ。」 俺の強い要望で部屋は真っ暗ではなく、豆電球?みたいな小さいのは光ってる。 暗闇の中、独特のオレンジの光、浮かび上がる部屋の造形。 天井の染みは見えないが、視線を感じる気がするし タンスの側、部屋の隅の影は真っ黒く不気味である。 「じいちゃん、寝た?」 訪ねても返事はない。 寝息が両となりから聞こえた。 俺が怖い思いしてるのにひどい。泣きたい。 母さんの所に行きたいけど、絶対ひとりじゃいけない。 俺は頑張って目を閉じて寝ようと試みた! ふと目を覚ます。 辺りは、まだ暗かったので深夜みたいだ。 最悪だ。 もう一度寝ようと懸命に目を閉じていると 音が聞こえた。 何の音だろうか。 耳を済ませていると。 ギリギリギリギリ ギリギリギリギリギリギリギリギリ 何か硬い物を擦り合わせるような音が聞こえてくるのだ。 俺は昔話の三枚のお札を思い出した。 鬼婆が夜に包丁を研ぐシーンがあった。 まさか、 近くで妖怪が俺達家族を食べようと何か準備しているのではないだろうか。 俺は怖くなってじいちゃんにすがりついた。 「じいちゃん!じいちゃん!変な音するよ!」 こちらに背を向け寝ているじいちゃんの体を揺さぶる。 すると、じいちゃんがゆっくりこちら側を向いてくれ、 「ひぃっ!?!?」 ギリギリギリギリギリギリ ギリギリと歯をむき出した白目の化け物が俺を見ていた。 俺は化け物から逃げようと後ろに下がった。 正確に言うと、下がろうとしたが背中に何かがあって下がれなかった。 そこで俺はとなりにいるばあちゃんの存在を思い出した。 「こんな夜中に何やどうしたんや?」 ばあちゃん!! 「ばあちゃん!!たすけ 俺を覗き込んできた ソレ は ゴフッ と何かを 口から 吐き出した それは、にんげんの 歯 だった。 一本や二本ではない歯の塊だ。 それが おれの 手の上に 俺は悲鳴をあげた。 その後のことはよく覚えていない。 気がついたら、母さんに抱き付きながら泣いていた。 俺に押し退けられた兄弟達は寝ぼけた顔で不思議そうに俺を見ていた。 「あんたぁー、また白目むいて歯ぎしりしながら寝てたんやないのー?」 と祖母が言う。 「そうかのー?自分じゃ分からんの。 それより、ほれ。」 祖父が入れ歯ケースを祖母に渡す。 「ありがとう。取り忘れて寝てもうた。」 おしまい!
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