ありがとう!

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ありがとう!

………やっと来た。 ちゃんと最後まで話せるかな。 桜の花びらがヒラヒラ 風に吹かれながら、僕たちを歓迎 しているようだった。 今日は、来てくれてありがとう 改まって、何? 今日来てもらったのは……… 何故僕が死んだのか、そして あの日、僕に会えなかったのか 君は、ずっと「知りたかったんじゃない?」 「…………………………」 彼女は、黙ってしまった。 彼女は、静かに話はじめた。 「私は、君がいなくなってから10年も 忘れられずにいた。紛らわそうとして 好きでもない人と付き合ったりもした でも、何をしてても忘れることは、出来 なかった」 何故、あの日 会うことが許されなかったのか 私はずっと理由を探してた それは………… 僕と君は……… 血の繋がった、「兄弟」だってこと 僕は、あの日"友達"の見舞いで病院に いたんだけど、たまたま「君の親と僕の親が話してたのを聞いたんだ」 そしたら……… 君と僕は 血の繋がった兄弟だって 僕は泣きながら、いちもくさんに 病院から走りだした。雨が降っていた あの日…… 僕は、車に引かれ その場で息を引き取った。 頭からの出血が酷く 無惨だった。 だって、君と僕が血の繋がった 兄弟だって、信じたくなかった。 だって僕は「ずっと君を愛していたから」 そんな……… 私は、ずっと「病気」でなくなったって じゃ、ずっとずっと私を騙してたってこと でしょ。皆、最低……… もう何も聞きたくない ずっと、ずっと前から僕たちの親は 苦しんでた。君と僕を会わせていい のか。このままでずっといる方がいい のか。悩んでた。 だけど、僕は、あっけなく 死んでしまった。 だから、僕は やり残したことを やりに帰ってきた。 最後の僕のお願い聞いてくれる? 「うん」 君を抱きしめてもいいかな? 「いいよ」 彼女の体温が伝わってくる 暖かくて、優しくて…… ねぇ、どうしたの? 体が……… もう行かなきゃ……… 君はもう大丈夫。 僕がいなくても きっと、強く生きて行ける 今まで「ありがとう」 彼はそう言って、本当に 消えて行った。 これは、幻じゃない。 現実に"彼"が居たのだ。 私は、彼がいなくなった後 桜の花びらを瓶に詰めて 持ち帰った。 彼がいたという"証拠"を残す為に 私は、毎日、この桜の花びらを 眺めながら、彼のことを思い出している
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