新たな人類

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 M博士の言葉により翌日、M博士に選ばれた者たちがタイムマシンのある研究所に集結すると、まずM博士は自分が実験台になるべく転送台に乗った。そして聡美がタイムマシンを始動し、モードダイヤルを転送モードに切り替え、転送対象者ロックボタンを押してM博士をカプセルの中に閉じ込め、環状抑制ビームで捉え、位相変換コイルの働きによってエネルギー態に近い量子にまで分解した。  その結果、転送パターン化したM博士は、パターンバッファに蓄えられた後、研究所の外壁に設置してある転送ビームエミッタから聡美が設定したスペースコロニーの地まで放射された。  量子レベルのミクロの世界ではエネルギー波と粒子は同質の存在だから転送パターンは環状抑制ビームに乗って設定地まで運ばれて再物質化する。  従ってM博士はスペースコロニーの地で物質化して再生した。  聡美は再生完了を知らせるランプが点灯したのを見てモードダイヤルを回収モードに切り替え、再生ボタンを押した。  すると、転送ビームエミッタから転送ビームが放出され、遠距離仮想焦点分子スキャナーの働きによってM博士を捕捉し、位相変換コイルの働きによってエネルギー態に近い量子にまで分解した。それが転送ビームに乗って転送ビームエミッタを通ってパターンバッファに蓄えられた後、データが開いてカプセルの中に量子が充満して行き、ディジタル演算回路が作動して量子の状態ベクトルの線形結合、所謂、重ね合わせが始まり、M博士が見る見るうちに出来上がって行った。  それを目の当たりにした聡美を始め集結した者たちは押し並べて歓声を上げ、M博士と聡美に至っては手を取り合い抱き合って喜んだ。 「皆さん!安心してください!私は確かにスペースコロニーの地に立ちました!そこは緑豊かな楽園のようでした!そしてここへ帰ってきたのです!正に実験は大成功を収めました!」  M博士の吉報を聞いて更に喜んだ一同から割れんばかりの拍手喝采が起こった。  それから順繰りに一人ずつが転送台に乗ってM博士の操作によってタイムマシンでスペースコロニーの地へ次々に転送されて行った。  最後にM博士が転送台に乗り、リモコンでタイムマシンを操作してスペースコロニーの地で再度、再生され皆との再会を果たした。 「ここでは皆、何によらず心穏やかにして手を取り合うことはあっても何かを取り合うことのないようにしよう!」  地球に残った者たちを反面教師にしたM博士の心の籠った力強い言葉を皆が噛みしめ賛同した。  斯くして新たな地での人類の歴史が始まった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加