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宙を飛んだぬいぐるみは、歩道を越えて車道まで。そしてそこを走る一台の軽トラックの荷台へ落っこちた。
運転手はまるで気が付いていない。その白い車体は歩道に立つ二人と一匹から、あっという間に見えないところまで進んでいってしまった。
*
軽トラックは十分程走った末に、一件の建物の前で停車した。
白い建物だ。幼稚園や保育園のような造りに近い。
運転席から下りたのは若いという言葉がよく似合う男だった。健康的な肌色に、筋肉質な体。
荷台へ回り込んだ男は、そこに転がっていたぬいぐるみを手に取り不審そうに眺めたが、やがて共に積んであった段ボールと一緒に抱えて建物の中へ入っていった。
廊下を渡り、男が足を踏み入れたのは、広々とした部屋である。壁には子供が描いたであろう絵が貼られている。部屋の一ヶ所にはパズルマットが敷かれて、そこには積み木やフィギュアといった玩具が転がっている。
部屋の中には十数人の子供がいた。男が部屋へやってきた事に気がつくや否や「わっ!」となって一斉に駆け寄ってくる。
そんな子供達の様子に頬を綻ばせて荷物を下ろした男の名は神木。この孤児院の職員である。
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